フランスの大統領選挙をめぐる新たな政治状況―新政権の政策とEU・世界―

昨日は「日仏対話週間」の企画で恵比寿の日仏会館で開催された講演会を聞いてきました。フランス人の3名のパネリストの話が聴けてとても有意義でした。

特に3氏の以下の発言が気になったので書き留めておきます。

1 ドミニック・レニエ氏 (フランス大統領選挙・国民議会選挙について)

  ・今回の選挙では棄権や白票が多い。マクロンに投票した人は実は少ない。

  ・国民議会選挙でen marcheが過半数となったのはマクロン支持というよりも、既存の政治家に対する不満の現れ 

  ・マクロン氏の選挙母体 en marche は運動であり、政党になっていない。政党になれるか、団結できるかに注目。

  ・マクロン氏の演説は上手であるが、今後は政策を実行できるかが課題。

2 クリステイアン・ルケンヌ氏(EU Brexitについて)

  ・Brexitはフランス人にとっても意外な結果。イギリスはフランスにとって数少ない貿易黒字国なので通商上重要。Brexit ではイギリスにいる30万人のフランス人(主にビジネスマン)やフランスにいるイギリス人(こちらは田舎に住む退職者が多い)の扱いが問題

・金融セクターのロンドンからフランクフルトへの動きはあるが、せいぜい従業員の5%程度でインパクトは小さいのではないか。

BrexitはEUにとっては痛手が小さいが、関税同盟からの離脱を伴うのでイギリスには打撃。将来的には再加盟もあるのではないか。

・欧州に対するアメリカの防衛の関与が弱まっているのは、オバマ大統領時代から。

マクロン氏は労働市場改革、財政赤字解消の実行が急務で実行力が試される。

3 パスカル・ボニフェス氏(国際政治)

・国際政治ではフランスの右派と左派で立場が異なると言うよりも、ドゴール主義が西欧主義かで異なる。

・ドゴール氏はNATO脱退など冷戦中でも外交上独自の立場をとる。先進国からは冷ややかに見られたが、発展途上国からは支持を得る。イスラエルと国交断絶はアメリカ追従でないことの現れ。

・ドゴール主義はミッテラン大統領にも継承。パレスチナ承認はその例。イラク戦争不参加まではこの流れが続いていたが、シラク政権の後半からアメリカの影響を受けるように方針転換し、サルコジ大統領では顕著でフランスの影響力が低下。

マクロン大統領はドゴール派であることを鮮明にしている。トランプ大統領の誕生やBrexit でフランスの国際的な立場を強める。ただし、イスラエルとの関係で強い態度に出られるかが今後の注目点。

この他日本人パネリストからも以下のような指摘がありました。

・大統領選挙の集会で集まる人が全く異なる。マクロン候補の集会は音楽が響き参加者の表情もの明るい。民族の多様性を感じ、若者のインテリが多い。これに対しルペン候補の集会は参加者が暗く、社会の負け組の集会との様相。マクロン氏がこうした社会の分断を修復できるかが鍵。

・フランスの国民議会でマクロン派が圧勝したもう一つの要因は、現職の4割が立候補しなかったことも大きい。選挙情勢劣勢との理由のみならず、地方公共団体の役職との兼職禁止が厳格になった影響もある。

4時間弱の長い講演会でしたが、日本のマスメディアから知ることはできない情報ばかりでとても有意義な会でした。ただし、フランス語の部分がどこまで理解できたかは聞かないでください。